院長あいさつ

オンリーワン病院を目指す

院長  狩 野 稔 久

 TQM活動の長い歴史が当院にはある。その医療の改善活動を通して全国の病院と交流する中で、地域に対する社会的責任を見据えながら地域に密着した運営で成功を収めているいくつかの病院の話を聞いた。
しかし、他の病院がそのままのやり方を真似したとしても果たして上手くいくものであろうか。
病院と地域との関係は、その病院の担っている機能や他病院の機能、医療資源の分布、周辺地域の人口、高齢化率、産業構造、交通インフラ、文化、風土などの組み合わせからなり、一つとして同じものはない。普遍的な解答がない中でこそ、各々の病院の工夫が大切になってくる。自院の特長を生かし他との差別化を目指すことが肝要だ。
 島根大学医学部で「益田市医師会の地域医療活動」として講義をさせていただいたことがある。聴講された先生方から地域に密着したユニークな医療提供体制に好意的な評価をもらった。「益田だから、これで上手くいっているのですよ」と応えながら、30年以上前に「新たなる時代に対応した『益田地域独自』の医療サービス体制の創造と圏域の医療環境の改善」を目的に益田地域医療センター医師会病院建設を決断された、先達医師会員の先見の明に今更ながら恐れ入った。
 その進取の気性を受け継ぎ、益田という地域にしかない、益田にしかできない、魅力あるオンリーワン病院を今後も私たちは目指していく。

平成31年所感

 「平成」が、まもなく終わる。

 昭和61年130床余りの病床からスタートした益田地域医療センター医師会病院の「平成」を振り返ると、平成6年に検査棟、管理棟の増築などで機能拡大を図り、平成8年には益田市から運営委託を受けた老人保健施設(99床)を併設、また平成12年には介護保険制度開始にあたり市からの強い要請による療養病床を増築、更に平成16年には島根県が策定した県西部医療提供体制整備計画に基づくリハビリテーションセンターが完成し、全病床数343床(一般病床163床、療養病床88床、特殊疾患病床48床、回復期リハビリテーション病床44床)となり現在に至る。また、保険予防センター、臨床検査センター、地域リハビリテーション支援センターとしての機能、地域医療拠点病院、中四国地方では初の地域医療支援病院としての役割も果たし、さらに医師会として訪問看護ステーション、ホームヘルプ事業所、訪問リハビリテーション事業所、居宅介護支援事業所などの介護保険関連サービスや地域産業保健センター、益田市国民健康保険診療施設の運営も行ってきた。平成20年、職員保育所を開所、平成25年医師住宅、翌年には職員宿舎も整備した。さらに平成27年、在宅医療介護連携・研修センター(南棟)が竣工、平成30年、益田市地域包括支援センターの業務委託を受けている。
これらの事業展開の歴史は決して医師会の戦略的機能拡大ではなく、地域住民、行政の医師会に対する診断、治療のみならず、健康増進、疾病予防からリハビリテーション、ターミナルケアー、生活支援にいたるまでの幅広いサービス提供を求めるニーズに応えた結果であった。
 平成の次の新しい時代、地域社会は人口減少、少子化が進み超高齢社会となる。時代や社会が変われば病院も変わらなければならない。やりたい医療の追求ではなく、ニーズに合った医療を提供し、さらにニーズを先取りする医療、介護を目指すことが必要となる。
本年は県が策定した地域医療構想実現に向け目に見える行動が求められる。同構想で得られたデータと実臨床で実感しているニーズに基づいて自院の機能を客観的に把握し、地域の中でのあり方、将来像を描き、一般病床再編、介護療養病床の転換などを具現化して地域に必要とされる病院、将来にわたっても地域から選ばれる病院を目指さなければならない。
新たなる年を迎え、病院設立時に医師会が決意し実践してきた「新たなる時代に対応した益田地域独自の医療サービス体制の創造」に再挑戦する覚悟が問われる。

平成30年所感

 太陽系内の8つの惑星が、太陽に向かってほぼ一直線に並ぶ現象を惑星直列という。
公転周期の異なる全惑星が一列に並ぶ瞬間はめったに起こらない、まさに天文学的な確率である。
その滅多に起こらないようなことが2018年の社会保障制度改革で起こる。2年毎の診療報酬・3年毎の介護報酬の同時改定だけでなく、地域医療構想、療養病床の見直しを反映した第7次医療計画と第7期介護保険事業計画がスタートする。他にも医療費適正化基本計画、新専門医制度などなど改革が目白押しである。さらに当院では3月に病院機能評価認定更新も加わる。
 この「惑星直列」を前に病院としてどのような準備をし、どのように乗り越えていくか。方向を見極め、計画を策定し全職員で実行しなければならない。それにあたっては「頑張ります」「努力します」という精神論的な約束では、はなはだ実効性に乏しい。
以前、医療のTQM推進協議会を通じて知己を得た、麻生飯塚病院の親会社である株式会社麻生の麻生泰会長(麻生太郎元首相の弟)に、目標の作り方を教わったことがある。
目標の作り方にはSMARTの法則というのがある。
 Specific = 目標が明確か
 Measurable = 目標が数値化されていて評価しやすいか
 Attainable = 達成可能か
 Realistic = 現実的か
 Time bound = 期限が明確か

Specific、Measurable、Attainable、Realistic、Tim boundの頭文字を取ったものだ。
 QC活動で学んできた「問題意識があり、解決能力があり、他人のせいにせず、相手の立場にたって仕事に取り組む」姿勢で、自分でできる目標を持ち改革元年としたいものだ。