認知症の心理療法

1.はじめに

近年、日本は高齢化が進み、同時に認知症も増加してきています。65歳以上の高齢者のうち、認知症の人は推計15%で、2012年時点で約462万人に上ることが厚生労働省研究班の調査で分かった(日経新聞より)。認知症になる可能性がある軽度認知障害の高齢者も約400万人いると推計。65歳以上の4人に1人が認知症とその“予備軍”となると計算がされています。

2.認知症とは

認知症とは、生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで日常生活・社会生活を営めない状態をいいます。認知症は最大の危険因子は加齢とされており65~69歳での有病率は1.5%、以後5歳ごとに倍に増加し、85歳だと27%に達するとされています。

3.加齢による物忘れと認知症の違い

加齢による物忘れ 認知症
忘れ方 体験したことの一部を忘れる
(例:食事で何を食べたか忘れる)
体験したことの全体を忘れる
(例:食事したこと自体を忘れる)
自覚 物忘れをしている自覚がある 物忘れをしている自覚がない
日常生活 支障はない 支障がある
進行 悪化はみられない 悪化していく
その他の症状 なし ・いつも同じ服を着ている(判断能力の障害)
・段取りよく物事を行えない(遂行機能障害)
・見当識障害がみられる

※認知症の症状は認知機能(記憶・見当識・理解)の障害を考えられるかと思います。しかし認知症の種類や進行により記憶だけでなく精神症状や行動異常であるBPSDとよばれる暴言・暴力、徘徊、異食、妄想などが大きな問題となり、日常生活活動の阻害因子となります。

4.認知症の心理療法

認知症の心理療法として、①回想法 ②バリテーション療法 ③リアリティー・オリエンテーションというものがあります。

①回想法とは認知症の患者の過去の回想に共感的受容的姿勢をもって働きかける心理療法のことをいいます。回想法ではテーマに沿った道具を使用し、個人やグループで行われます。
 テーマと道具の例
  ・「子供の時の遊び」:コマ・竹とんぼ・お手玉
  ・「学校の思い出」:教科書・文房具
  ・「お祭り」:うちわ・写真などがあります。

②バリテーション療法とは認知症患者の混乱した行動の裏には必ず理由があると考え、認知症患者の「虚構の世界」や「心理現実」を否定せず受容することを原則とする一連のコミュニケーション技法のことをいいます。10の原則と14の技法があります。

 原則の例
  ・「すべての人はユニークな存在であり、独立した人格として尊重されなければならない」
  ・「混乱した状態にあっても、すべての人は価値ある存在である」などがあります。

 技法の例
  ・事実に基づいた言葉を使う:実際の真実を患者に説得するものではなく、「誰が」「なにを」「どこで」「どうやって」といった認知症患者の思考のなかで起こっている事実を詳細に聞く質問を行う。
  ・相手の言葉を繰り返す:単純に繰り返すというより、認知症患者と言い争ったり相手の失敗や失ったものを指摘したりはせず、相手のしゃべりたい内容を理解し、相手の希望通りにしますよとまずは受け止めること。認知症患者は相手が自分のいうことを繰り返して、それが確認されると安心し、介助者を信頼するようになる。そのとき、声の大きさや抑揚なども本人に合わせるとよりよいとされています。

③リアリティー・オリエンテーション(現実見当識訓練)とは日付、季節、居場所など現実の情報を伝えて見当識を高める認知リハビリテーションの一種のことをいいます。認知症で混乱している患者は、「今が朝なのか夜なのか」、「春なのか夏なのか秋なのか冬なのか」、「自分が今どこにいるのか」、「話している相手が誰なのか」わからなくなることがあります。このような状態は、しばしば患者を当惑させ不安になってしまいます。そのため、現実の情報を伝えて見当識を高めることにより情動や精神症状の安定軽減をはかり、その結果として行動障害の改善が促されることを期待されています。

※認知症は早期の受診が重要とされていますので、「物忘れがひどくなった」「普段と異なる行動をとるようになった」など症状が発現した場合は物忘れ外来など病院への早期の受診をおすすめします。

カテゴリー: リハビリ通信 パーマリンク