失語症の方と話す

ある日突然、あなたの家族が病気や事故のため言葉をうまく使えなくなってしまったら、どうしますか?
言葉の障害にはいくつか種類がありますが、今回はその中のひとつ、失語症について少しお話したいと思います。あなたの家族がもし失語症になってしまったとき、どんな風に接したらよいのでしょうか。

失語症とは

脳卒中や事故等のため、言葉をつかさどる部分の脳が損傷を受けることによって生じます。
失語症では「聴く」「話す」「読む」「書く」といった言葉を操るあらゆる能力が障害されます。人の話を聴いて理解することができない、話したい言葉が出てこない、文字が読めない、書けない。しかしこれらの症状や重症度は、脳の損傷を受けた場所や大きさによって異なってきます。同じ「話す」能力の障害でも、時々ものの名前が出てこない程度の方から、「はい」「いいえ」の返事もできない重度の方まで様々です。
日々当たり前に行っていた会話ができない、失語症の方の心理的なストレスは計り知れません。もし家族が失語症になってしまったとき、その人が孤立してしまわないように、上手に手助けができるでしょうか。大切なことは、失語症を理解し、適切な方法で接すること。次に失語症の方と接するときのポイントをいくつか挙げていきます。

失語症の方との接し方

子ども扱いしない
言葉が言えなくなってしまっても、子どもの能力に戻ってしまったわけではありません。会話の輪に入れない、相談しないといったことのないように。
会話は焦らず、落ち着いた雰囲気で
顔を見て、お互いの表情のわかる位置で話をしましょう。表情や声の感じが相手のヒントになります。また先を急がないで、相手が言おうとしていることを最後まで聴く姿勢が大切です。
ゆっくり、はっきり、短い言葉で話す
聴く能力が障害されている場合、ゆっくりと、大切な言葉を簡潔な表現で、強調しながら話すと理解の助けになります。私たちが英語を聴くときと同じような感じです。一度でうまく伝わらない場合は、繰り返し言ってみましょう。
話題を急に変えない
失語症の方は会話の最中、突然話題が変わると対応できず、混乱してしまいます。もし話題を変える場合は、そのことをしっかり伝えましょう。
「はい」「いいえ」で答えられる質問に
なかなか言葉が出てきにくい場合には、質問の方法を変えてみましょう。「どこに行きますか?」「どうやって?」ではなく、「駅に行きますか?」「電車で行きますか?」のように「はい」「いいえ」で答えられる質問にすると、答えを引き出しやすくなります。
ヒントを増やす
絵や写真を話に取り入れることは理解の助けになります。また身ぶり手ぶり、表情や声の調子も良いヒントになります。文字を読む能力が保たれていれば、文字を併用するのも良いでしょう。選択肢を提示して、その中から選んでもらう方法もあります。
どうしても伝わらないとき
上記のようないろんな方法を使っても、どうしても伝わらないこともあります。そんなときには分かったふりをせず、正直に一緒に伝わらなかったことを残念がりましょう。一生懸命伝えよう、分かろうという姿勢が基本です。

失語症は、たとえ長期にリハビリテーションを行ったとしても、残念ながら病前と同じ状態に戻ることは難しく、多くの方が後遺症を残したままその後の生活を送らねばなりません。しかし日々の生活の中で言葉を使う適切な環境があれば、長い年月にわたって少しずつ良くなっていくとの報告もあります。
先にもあげましたが、言葉はうまく使えなくなっても、それぞれの人間性というものは病前と変わりません。周りの人が失語症について正しく理解し、失語症者が楽しくコミュニケーションをとれる環境を作っていただければと思います。

参考文献:『失語症の人と話そう』地域ST連絡会 失語症会話パートナー養成部会
編集 / 中央法規

カテゴリー: リハビリ通信 パーマリンク