高齢者の口腔ケアについて

口腔ケアについては、誤嚥性肺炎を予防する効果がある、また嚥下障害のある方にとっては食事の前後に行うことで口腔器官(口唇、舌、歯、顎、頬など)の知覚や意識の刺激となるため、嚥下訓練の第一歩になるということがよく知られていると思います。

口から何も食べていない方には、口腔ケアは必要ないのでしょうか?。
実は食べていないと唾液の分泌が減り、口腔内の自浄作用が低下するため、粘膜の垢等を栄養源にして細菌が増殖しやすくなるのです。わたしたちの口の中には、300種類以上、数千億個の細菌がいるそうです。想像すると少しぞっとしてしまいますが、1日口腔ケアをやめるとその細菌が10倍以上になるともいわれています。よって、食べていない方でも唾液と一緒に細菌を誤嚥することによって肺炎を発症することがあり、口腔ケアによる清潔の保持はとても重要なことなのです。

口腔器官には食べ物を咀嚼して飲み込む、という働きの他にも、ことばを話す、表情を作る、といった重要な役割があります。口臭や口の汚れ、乾燥などがあると、思うように口を動かして話せなかったり、口を開けて笑うことに抵抗を感じる場合があるかもしれません。そのため、個人個人に合った方法で丁寧な口腔ケアを継続することによって、誤嚥性肺炎の予防、食べる機能の改善という効果だけではなく、他者とのコミュニケーションや生活全般に良い効果をもたらすと考えられます。

以下に、口腔ケアの方法や工夫についてご紹介しますが、口腔内の状態や精神状態、身体機能によって口腔ケアの方法もそれぞれ変わってきます。歯科医師、歯科衛生士をはじめとする専門家にご相談のうえ、1人1人に合った方法を取り入れるようにしましょう。

口腔ケアの方法

姿勢 座位の保てる方は座って行いますが、難しい場合は側臥位か、ギャッジアップで頭部を前屈させた姿勢をとります(溜まった唾液や水を自然に吐き出せるように、頭部を横向きにすると良い)。
実施 ①義歯を取り外します。
②うがいやスポンジブラシなどで大きな食物残渣を除き、口腔内を湿らせます。
③歯ブラシを歯面に軽くあて、振動させるように磨きます(ペングリップで持つと適切な強さになる)。義歯との境の部分、歯の裏側も丁寧に磨きます。
④舌や粘膜をスポンジブラシ等で拭います。
⑤うがいやガーゼで清拭を行い、さっぱりとした状態で終了します。

口腔ケアに関する物品

(写真1)
最近は、口腔ケアに関する様々な用具が出ています。
それほど高価でなく、簡単に使える便利なものが多いので、「普通の歯ブラシだけではどうもきれいにならない」「口腔ケアは時間がかかる」と思われる方は一度お試しになってください。

歯ブラシ 誤嚥性肺炎患者は無歯顎者に比べ有歯顎者に多い、というデータがあるそうです。それだけ残っている歯に汚れが付着しやすい、ということになります。数本でも歯が残っている場合は必ず歯ブラシでの清掃が必要になります。
スポンジブラシ 舌や粘膜に付着した食物残渣や痰を拭うのに便利です。水につけ、軽く水気を絞ってから使用します。痰が乾燥している場合には体温程度のお湯で湿らせると汚れが落ちやすくなります。(写真2)
くるリーナブラシ
(オーラルケア)
痰や食物残渣をからめとるのに優れています。歯ブラシと同様に、水できれいに洗い、繰り返し使用できます。(写真3)
ボニカ デンタルブラシ ブラシの毛が横についているので、歯の裏を磨きやすいのが特長です。(写真4)
吸引ブラシ
(オーラルケア)
水分や唾液での誤嚥が多い方に適しています。吸引機に接続し、唾液や水を吸引しながら磨ける歯ブラシです。(写真5)

義歯の取り扱い

  • 入院中に外されそのままになることが多いようですが、義歯がなければ発音がしにくい、舌が肥大化する、顔貌が変わるなどの影響があります。特に問題がなければできるだけ使用するようにしましょう。
  • 食事が終わったら、義歯を外してぬるぬるしなくなるまで歯ブラシでこすり洗いをします(歯磨き粉は義歯が磨耗することがあるので使用しない)。これは、義歯にも歯と同じように食物残渣や歯垢が付着するためです。汚れがついたまま洗浄液につけても効果はないので、必ずブラシで磨いてからにします。洗浄液の使用は週に1、2回でよいようです。
  • 義歯の下の粘膜や歯茎を休めるために、夜間は義歯を外しておきます。義歯は乾燥すると変形するので、外している時には必ずきれいな水につけておきます。
  • 片麻痺の方は義歯と歯ブラシを持って磨くことが難しいことがあります。この場合は片手で義歯が磨けるように、ブラシを洗面台に固定して、義歯を持って洗う方法があります(写真6)。吸盤つきのブラシが市販されていますが、たわしに針金で吸盤を取り付けるなどして作ることもできます。(写真7)本人の能力を生かし、できるだけ自分で口腔ケアができるように支援していくことも大切です。

写真1

写真2

写真3

写真4

写真5

写真6

写真7

 

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