大腿骨頚部骨折

大腿骨頚部骨折とは太ももの骨の脚の付け根に近い部分での骨折です。

以前は

大腿骨頚部骨折=頚部内側骨折+頚部外側骨折

と言っていました。

現在は

頚部内側骨折→大腿骨頚部骨折
頚部外側骨折→大腿骨転子部骨折

と分けられています。

この2つの骨折の違いは股関節の中で折れているか、股関節の外で折れているかの違いです。関節包の外側は血流がよいため骨がつきやすいが、内側は血流が乏しいため折れた骨はつきにくい。そのため両者では治療法が異なります。

大腿骨関節内は写真のごとく、すべすべで周囲に筋肉など組織が付着していないたいめ、血流が乏しい。
(Prometheusより転載)

高齢者のなかでも特に骨粗鬆症を有する女性に起こりやすくなります。また、この骨折の95%は転倒により起こります。日本では2010年度推定で約17万人が受傷しており、2020年には約22万人、2030年には約26万人、2043年には約27万人になると予想されています。受傷機転としては、つまずいて転倒・椅子やベッドから尻餅をつくといった軽微な外傷で受傷することがほとんどです。稀に原因不明な場合やオムツの交換等で発生することもあります。

症状は?

一般的には転倒後歩行困難となり、脚の付け根が激痛のため股関節を動かすことが出来なくなります。頚部骨折<転子部骨折で疼痛は強くなります。頚部骨折のヒビの場合は、立てたり、歩行できたりする場合があります。認知症のある方の場合には痛がらず、しばらく気づかれないこともあります。

治療法は?

治療法は大きく分けて手術療法と保存療法があります。

手術療法

大腿骨近位端骨折は骨折そのものによる障害より、ベッド上安静に伴う合併症によるさまざまな問題が出現します。
具体的には褥瘡(床ずれ)、尿路感染症、肺炎、認知症の出現・増悪などが起こる可能性が高くなります。また体を動かさないことで、関節硬くなったり筋力低下などが生じるため、骨がついても体力低下のために歩行困難となってしまう場合があります。
そのため早期に手術を行い、リハビリを開始することが望ましいですが、最近では狭心症・脳梗塞予防のため、抗凝固剤(血液をさらさらにする薬)を内服しているために手術を待機する必要がある人や超高齢者のため手術可能な全身状態であるか慎重に見極めるために時間がかかる人もおられます。
手術は、髄内釘固定術、スクリュー固定術、人工骨頭置換術などがありますが、どの手術にするかは骨折の状態によります。

保存療法

手術や麻酔というのは体にかなり負担がかかります。全身状態が悪い人では、手術を行う方が、寝たきりでいるよりも危険性が高いと判断される場合には保存療法を選択します。
手術しない場合でも数ヶ月経過すると痛みは落ち着いてきます。
頚部骨折部は、癒合する可能性は少なく体重をかけることはできませんが、あまり痛みなく車椅子に座っていることは可能です。体の拘縮予防ためにも痛みが落ち着き次第できるだけ早く車椅子に移って寝たきりを防ぐことが重要になります。
転子部骨折の場合、安静を保っていれば骨はくっつきます。通常3~4週間程度で多少動かしても骨がずれなくなり、2~3ヶ月程度で体重をかけられるようになります。ただ脚が短くなるため、非常に歩きにくくなってしまいます。
しかし、実際問題としては、褥瘡(床ずれ)、尿路感染症、肺炎、認知症の出現・増悪などが起こる可能性が高く、その結果多くの高齢者が寝たきりとなってしまいます。

その後は?

一般的に骨折後の歩行能力は手術をしたとしても1ランク落ちるといわれています。例えば家の外を自由に歩いていた人は杖が必要になり、杖で歩いていた人は主に家の中での生活になり、家の中をつかまりながらやっと歩いていた人はベッドからポータブルトイレや車椅子への移動がやっとになり、といった具合です。しかしリハビリテーションの進み具合は個人差が大きく本人の意欲、痛みの程度、体力、合併症、認知症の有無などによって大きく変わってきます。特に認知症症状が強い場合にはリハビリがあまり進まないことが予想されます。
また大腿骨近位部骨折は骨折による全身への負担や運動機能の悪化のために、持病が悪化したり、新たな病気にかかったりすることがあり、寿命にも影響し1年後の生存率は80-90%(日本人の85歳の1年後生存率93%、90歳生存率88%)と平均より低くなっています。

文責
守屋 淳詞

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