メンタル・ケアと芸術

 先日、自殺防止法案が国会で可決されまたが、現代社会はストレスのたまることが多く、自殺者の多いことに驚きを感じます。
その背景には、過重労働によるストレス、病気など身体的な悩み、経済的なもの、その人数は、日本では1年で3万人以上の人が亡くなっております。肝硬変、肝癌で亡くなられる方が年間3万4千人ですから、それに匹敵いたします。死因の4番目くらいに相当します。
 日本では自殺者の3分の1の人が誰かに相談し、3分の2の方が誰にも相談無しに亡くなっています。また、労働者の自殺のうち65%が過重労働によるストレスによるものとされています。1ヶ月に80時間以上の超過勤務の方は産業医、または産業保健センターに相談してください。また1ヶ月に100時間以上の超過勤務の方は、医師の診察が義務づけられております。

 精神的に落ち込んでいる人に対して“もっと頑張りなさい”とか“もっとしっかりしなさい”とか言葉を介してのアドバイスは返って逆効果で反発を招きます。精神的に落ち込んでいることが長いと、やがてうつ状態に移行し自分のコントロールが出来なくなります。こういった場合、本人の気付きが大切で、間接的な“何か”で対応すること、これが非言語療法です。

 精神的に落ち込んだり、うつ状態にあるときに用いられる療法にコラージュ療法があります。コラージュとはフランス語で、糊付けすることを意味します。これはピカソをはじめとする現代美術の重要な技法のひとつであります。すなわち雑誌やパンフレットなどの既成のイメージをはさみで切り抜き、台紙の上で再構成し、糊付けするというきわめて単純明快な方法であります。コラージュ療法はお互いの信頼関係の上に成り立つもので、出来上がった作品を対象者と話し合う。その時指導者の解釈を伝えようとするよりも、対象者の製作中の心の動きを聞いたりしてみることが大事、その時、切抜きについて説明してもらい。切抜きの内容から連想を広げていくような心構えが必要。無理な解釈は避けるようにして相手に“気付き”を促すようにする。

 また、音楽療法でいえば、うつ状態がある場合、マイナー曲を聞かせ感情の動きを観察しながら感想を聞くようにする。演奏者の心のメッセージがあるほど、また、その演奏によって感動、感銘があるほど相手に“気付き”促す可能性があります。

 このような療法は芸術療法とも呼ばれておりますが、広辞苑によりますと芸術とは1)技芸と学術 2)一定の材料・技巧・様式などによる美の創作・表現・造形芸術(彫刻・絵画・建築など)表現芸術((舞踏・演劇など)音響芸術(音楽)言語芸術(詩・小説・戯曲など)、また時間芸術と空間芸術などに分けることもあります。ヒポクラテスの言葉に芸術は長く人生は短し(Ars longa vita brevisラテン語)・ 人の命は短くはかないものであるが、すぐれた芸術作品は永遠の生命をたもっている。芸術性というものは人間が日々努力し築き上げたものですが、それは一瞬、人の心の中に入って行くことが出来ます、それが感動、感銘です。私は感動・感銘があるものは、たとえそれが音楽であれ、スポーツであれ、大自然であれ、何であれ芸術性があると信じています。人生の分岐点、また、仕事面での悩みやストレスを抱えて居られる方こそ純粋な芸術との付き合いが必要です。どうにもならない悩みは諦めて忘れることも重要です。日本芸術療法学会という会がありますが、これはまさにメンタル・ケアと芸術との接点であります。芸術療法には科学的な根拠は存在しませんが、真の芸術に接した時、脳波にアルファ波が認められ、気持ちがすっきりし、精神的に勇気づけられて、ストレス状態から脱皮、人間をより高揚させるものでありましょう。

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