ビールを飲むと「痛風」になるか?

序章

今年もまた忘れずに、蒸し暑い日本の夏がやってきました。
ビールのおいしい季節に乾杯。といきたいのですが、ちょっと待って。
最近やたらと「低プリン体のビール、発泡酒」を謳い文句に、あたかもアルコール飲料の中で比較的プリン体含有量の多い従来のビールが、痛風の犯人であるかのような話を耳にします。それを聞くにつけビールファンである小生は心を痛める日々が続き、そこで本当に「ビールは痛風に良くないのか?」という疑問を抱き、文献を紐解くに到りました。
今回はその捜査結果をご報告いたしましょう。

痛風とは

痛風は高尿酸血症により血液中にあふれた尿酸が関節内に沈着し、それを白血球が攻撃することで激しい痛みが起こる病気で、風が吹いても痛いという例えからこう呼ばれています。(典型的には、ある日突然、足の親指の付け根が赤く腫れて痛み出します。大の大人が2、3日は全く歩けなくなるほどの痛みです。この疼痛発作はたいていの場合、1週間程で治まり、しばらくすると全く症状がなくなります。ただし油断は禁物で、半年から1年たつとまた同じような発作が起こります。それを繰り返しているうちに、足首や膝の関節まで腫れはじめ、発作の間隔が次第に短くなり、やがて関節の症状だけでなく、脳血管、心臓、腎臓などが侵されるようになる全身の病気なのです。)
この病気は明治時代までは日本にはほとんどないとされていました。ところが第二次世界大戦後、生活習慣の変化などにより痛風患者が増え始め、最近のデータでは、成人男性の5人に1人が高尿酸血症と推定されるようになってしまいました。

高尿酸血症とは

さて、先に説明しましたように痛風発作の背景には高尿酸血症という状態が潜んでいるのですが、高尿酸血症とは血清尿酸値が7mg/dlを超えるもので、実はこの尿酸の素になっている物質がプリン体といわれるものなのです(グリコのプッチンプリンとは全く別物です)。

尿酸の素はプリン体

ここでプリン体が体内で作られる2つの仕組みを解説しましょう。
私たちは新陳代謝といって、体内で毎日多くの新しい細胞を作り、古い細胞と入れ換えています。その古い細胞が分解される時、細胞の中の核に存在する核酸も分解されプリン体を生じます。もうひとつのプリン体の素は、私たちの活動エネルギー源であるATPという物質です。激しい運動をするとこのATPが急激に大量消費されます。その時、通常は利用された後、再びエネルギー源に戻るはずのATPが、さらにプリン体にまで代謝され尿酸を生成してしまうのです。そして私たちの体内のプリン体は、食品から取り込まれるものは少なく、このようにして体内で合成され生じているものが9割近くを占めているのです。
これらのことから、痛風の食事療法としてあまり厳格にプリン体制限をしなくても良いのでは、と言われています(しかし、これはあくまでも平均としての話で、プリン体の多い食事をしている人に厳格な制限を行えば尿酸値は2~3mg/dl低下したという実験があります)。

結論その1

というわけで、「プリン体の多いビールを飲んでも大丈夫」と結論を急ぎたかったのですが、そうは問屋が卸しませんでした。
ビールというより、なんとアルコールそのものによる血清尿酸値上昇の機序があったのです。飲酒をするとアルコール代謝亢進に伴うプリン体分解亢進、アルコール代謝と連動して増加する乳酸による腎での尿酸排泄低下などにより、尿酸値が上がってしまうのです。ですから焼酎やウィスキーのようにプリン体を含まない蒸留酒でもプリン体をカットした発泡酒でも、押し並べてアルコール類は安心できないのです。

最終結論

そこで、プリン体代謝への影響が少ないと考えられる適量飲酒(ビールなら大瓶1本、日本酒1合、焼酎お湯割り1杯/日)の範囲内では問題ないという結論についに達し、冷えたビールでのどを潤すことにして、筆を置くことにいたしました。

高尿酸血症の方の日常注意ポイント

  • 尿酸ができやすいアルコールを控える。
  • 食事の総カロリーを制限するなどして肥満を解消する。
  • 尿酸の排泄量を増やすため、水分をたくさんとり尿量を多くする。
  • 激しい運動は尿酸ができるので要注意。
  • ストレスは尿酸値上昇につながる場合もあるので、ストレスをうまく発散する。

参考文献
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン
聖マリアンナ医大難病治療研究センター ホームページ
お酒と健康ABC辞典(キリンビール発行)
痛風・高尿酸血症とアルコール飲料摂取(日本医事新報4153)

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