胃十二指腸潰瘍の原因はピロリ菌

以前は胃十二指腸潰瘍の患者様には胃薬(制酸剤)を服用していただきました。潰瘍の原因がストレス、胃酸、暴飲暴食などと考えられていたからです。
現在は十二指腸潰瘍の9割、胃潰瘍の7割はピロリ菌が原因と考えられています。残りの方は、胃酸、ストレス、鎮痛剤、煙草、酒、コーヒー、香辛料などが原因です。ですから胃十二指腸潰瘍の患者様にはピロリ菌がいないか検査し、感染していたら除菌するのが標準的な治療となりました。

1. ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)とは


1982年に、オーストラリアの研究者によって発見された細菌です。らせん形(ヘリコ)をした細菌(バクテリア)で、胃の出口(ピロルス)に近いところに好んで生息することから、この名前がつきました。ほとんどが幼少期に口から入って感染し、以降ずっと胃の中に住みついていると考えられています。胃の中は強い酸性で細菌は住むことができないと思われていましたがピロリ菌は自ら住みやすい環境をつくりだして棲息しています。日本での感染率は20代が20%、40代が40%、60代が70%程度と年齢が高いほど多い傾向にあります。このピロリ菌に感染していたとしても自覚症状は普通ありません。しかし、胃炎や胃十二指腸潰瘍などの主な原因である事、ピロリ菌を除菌すると潰瘍再発がかなり抑えられる事がわかってきました。また、1994年にはWHOからピロリ菌は胃癌の危険因子として承認されています。日本では2000年11月より胃十二指腸潰瘍の人でピロリ感染が認められた患者様に除菌療法が保険で認められるようになっています。

2. ピロリ菌感染症の診断方法

  1. 迅速ウレアーゼ試験
    上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の時に胃粘膜の生検をします。これを材料にピロリ菌のウレアーゼ酵素活性を調べて菌の存在を証明する方法です。この方法では胃十二指腸潰瘍とピロリ感染症の診断が同時にできるメリットがあります。判定は当日中にできます。
  2. 13C-尿素呼気試験
    検査用のお薬を溶かした水を飲んでいただきます。これを服用する前後に呼気を小さな紙袋で採取します。上部消化管内視鏡検査は必要ありません。除菌ができたかどうかの判定によく用いられます。胃内にピロリ菌が存在すればウレアーゼ酵素活性で13C標識二酸化炭素が発生する事を利用します。判定は当日中にできます。

3. 除菌治療の効果

ピロリ菌の除菌に成功すると、何度も再発を繰り返していた潰瘍の再発がおさえられる。維持療法(潰瘍が治った後も、再発予防のために薬を飲み続けること)が必要なくなるなどの効果があります。ただし、除菌の治療を中途半端に止めたりすると、ピロリ菌が薬に対して耐性をもち、次に除菌しようと思っても薬が効かなくなるおそれがあります。

4. 除菌療法を受ける前に

  • アレルギーを起こしやすい人は、必ず医師に伝えて下さい。
  • 今までに薬を飲んで発疹などアレルギー症状を起こした人は、その薬の名前を医師に伝えて下さい。
  • 特にペニシリン系の抗生物質でアレルギー症状を起こしたことのある人は基本的に行いません。
  • 喘息、じん麻疹、腎臓病など持病のある人は、医師に伝えてください。
  • 伝染性単核症というウイルス性の病気にかかっている時も行いません。
  • 除菌療法に使う薬と飲み合わせに注意する薬(副作用がでやすくなる)があります。服用中の薬は、医師に報告して下さい。

5. 除菌治療の方法と副作用


除菌治療は内服薬を1週間服用して行います。
内服薬は胃酸分泌抑制剤と2種類の抗生剤です。当院では飲み忘れのないようにランサップ400(3種類の薬を、1シートにパックした製剤)を処方しています。除菌治療後も潰瘍の程度により治療継続が必要な場合があります。また、ピロリ菌が検出されたからといってすぐにあるいは必ず除菌を行うということではありません。
副作用で最も多く見られるのは「下痢・軟便」です。症状が軽い場合には整腸剤などを併用することもありますが、ひどい腹痛や頻回の下痢、血便があらわれたら、すぐに主治医に相談して下さい。他に、味覚異常、過敏症(発疹など)、肝機能異常などが出ることもあります。治療中、体調が普段と違うことがあれば、自分の判断で治療をやめたりガマンしたりせず、主治医に必ず相談して下さい。

6. 除菌判定

除菌治療後にピロリ菌を除菌できたかどうか調べるため 13C-尿素呼気試験を行います。除菌成功率は約90%です。判定を正確にするため除菌終了後1ヶ月以上後に行います。

7. 除菌療法が成功した場合

ピロリ菌の除菌に成功すると多くの場合、何度も再発を繰り返していた潰瘍の再発がおさえられます。しかし、除菌に成功したにもかかわらず潰瘍が再発する場合があります。また、除菌に成功するともともと胃酸が低下している状態が改善されて(胃炎が改善して)胃酸の分泌が亢進し、胸焼け(逆流性食道炎)、びらん性胃炎を生じる場合がありますが特別たいへんなことになることはまずありません。

8. 除菌療法が失敗した場合

除菌療法がうまくいかなかった原因としてピロリ菌が抗生物質に耐性を獲得している場合、胃酸を抑える薬が効かなかった場合が報告されています。もういちど除菌療法を行うかあるいは維持療法を行うかなど主治医の先生と相談して下さい。

文責
高島 俊晴

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