ウイルス肝炎について

1. 肝炎ウイルスと感染経路

肝炎ウイルスは、肝臓に感染し肝炎を発症させるウイルスで、1965年にB型肝炎ウイルスが発見されてから現在まで、A,B,C,D,E型の5種類が見つかっています。A型とE型は糞便/経口感染で、A型肝炎は生ガキを食べて感染することが有名です。E型は日本にはないと言われていましたが、最近報告されるようになってきました。B型、C型は血液で感染し、ウイルスの存在が知られていなかった頃の輸血や、医療従事者の針刺し事故、性交渉、入れ墨などが感染源となっています。B型肝炎は母子感染が問題となっていましたが、現在はワクチンやグロブリンで予防できます。C型肝炎では、母子感染や性交渉での感染は少ないと言われています。D型肝炎は血液感染ですが、日本にはありません。

2.ウイルス肝炎の病態

肝炎ウイルスが肝細胞に感染すると、それを排除しようとする人間の免疫反応で肝細胞が攻撃され、肝炎が発症します。肝炎は、急性肝炎と慢性肝炎に大きく分かれます。
急性肝炎は、初めてウイルスが感染した時に、肝臓に強い炎症が起こる状態です。A型、E型、成人のB型肝炎ウイルス初感染では、著しい肝障害の後にウイルスが排除され自然に治癒しますが、ごくまれに重症化し(劇症肝炎)生命に関わることもあります。
慢性肝炎は、急性肝炎が起こってもウイルスが完全に排除されず、肝臓の炎症が持続する状態を言います。C型肝炎ウイルスに感染した人の約7割が慢性化し、またB型肝炎ウイルスの母子感染も慢性化します。慢性肝炎の状態になると、長い時間(10?20年)をかけて肝硬変へと進行し、更にそこから高率に肝癌が発生します。現在の肝癌患者の実に9割以上は、B型またはC型肝炎ウイルスに感染している人です。この「慢性肝炎→肝硬変→肝癌」という一連の流れをくい止めることが、ウイルス肝炎治療における一番の課題です。

3.ウイルス肝炎の症状

急性肝炎は、黄疸、全身倦怠感、食欲不振などの症状が現れ、肝炎の沈静化とともに改善していきます。全く自覚症状がなく、肝炎が治癒することもあります。劇症化した場合は、意識障害など重篤な症状が出現します。
慢性肝炎は、進行するまで症状が現れにくく、診断が遅れる原因となっています。肝硬変になり、肝機能が著しく低下すると、黄疸、腹水、浮腫、肝性脳症などの肝不全症状が出現します。

4.ウイルス肝炎の診断

肝炎の症状が認められたときや、健診などで肝機能異常を指摘されたときに、肝炎ウイルスマーカー(各種肝炎ウイルスの抗原や抗体)を測定します。もしウイルスマーカーが陽性で、他に肝障害をおこす原因(アルコール、薬物など)がなければ、ウイルス肝炎と診断できます。
B型あるいはC型慢性肝炎の場合、現在の肝臓の状態(炎症の強さ、肝障害の程度)を把握することが重要です。血液検査や画像検査(エコーやCTなど)でもある程度推測できますが、厳密には肝生検(肝組織を採取し、顕微鏡でみる検査)が必要です。肝障害の進行したB・C型肝炎では高率に肝癌が発生してきます。肝癌を早期発見するためには、定期的な画像検査が必要ですが、まずは症状のない、B・C型肝炎ウイルスに感染した患者を見付けることが重要です。そのため前年度から、一般健康診断でB・C型肝炎ウイルスマーカーを測定するようになりました。

5.ウイルス肝炎の治療

A型肝炎、B型肝炎にはウイルス肝炎を予防するためのワクチンがあり、ワクチン接種によってウイルスに対する抵抗力ができれば、ウイルスが体内に侵入しても肝炎の発症を予防することができます。
ウイルス肝炎を発症した場合、急性肝炎であれば殆どが安静と栄養補給(点滴など)で治癒します。重症化した時には、血漿交換など濃厚な治療を行いますが、救命率は50%前後といわれています。
B・C型慢性肝炎の治療は、
①直接ウイルスを攻撃する治療、
②肝障害の進行を抑える治療に分かれます。

① 直接ウイルスを攻撃する治療

インターフェロンという注射薬が代表で、現在でも中心的な薬剤として使用されていますが、患者によって効果に差があり、長期間の投与が必要、副作用が多いなどの問題点があります。
その他、新しい抗ウイルス薬が開発され、現在B型肝炎にはラミブジン、C型肝炎にはリバビリンという内服薬が使用できるようになりました。これらの新薬により、B・C型慢性肝炎の治癒率は向上したものの、まだ100%には遠く、更なる新薬の開発が望まれます。

② 肝障害の進行を抑える治療

抗ウイルス薬でウイルスが排除できなかった患者や、何らかの理由で抗ウイルス薬治療ができない患者には、グリチルリチン製剤やウルソデオキシコール酸などの薬剤を継続投与し、肝臓の炎症を抑えて肝障害の進行を遅らせるような治療をします。
以上のような治療をしても肝障害がくい止められず、肝硬変が進行し、黄疸、腹水、浮腫、肝性脳症などの肝不全症状が出現すれば、それらの症状を和らげるような治療を行います。
また、肝癌が発見された場合には、その進行度と肝機能とを考慮し、手術、経皮的局所治療、カテーテル治療、化学療法などから治療法を選択します。

文責
三宅 達也

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