糖尿病と歯周疾患

糖尿病を放置すると、いろいろな臓器に合併症を引き起こすことはよく知られています。口の中では、歯のまわりの組織が侵される糖尿病性歯周炎という病気がこれにあたります。うまく管理されていない歯周組織は、すでに歯肉炎ないしは歯周炎を起こしています。この炎症が糖尿病によってさらに助長されているものを糖尿病性歯周炎とよびます。

歯周疾患(歯周病)とは


「歯垢」あるいは「デンタルプラーク」といったことばを聞いたことがあると思います。歯のまわりの薄い膜にへばりついた細菌の塊のことです。歯垢1mgには、なんと数億もの細菌が密集しており、細菌密度では身体の中でトップクラスと言われています。この歯垢のなかのいくつかの種類の細菌が歯周疾患を発症させています。細菌そのものあるいは細菌が出す毒素により、歯肉に炎症をもたらし、歯を支えている骨を破壊します。骨まで破壊されていない状態を歯肉炎、さらに進行して骨が吸収されている状態を歯周炎といいます。歯肉炎と歯周炎を総称して歯周疾患または歯周病といいます。「歯槽膿漏症」という用語は、専門的にはあまり使われませんが、骨が吸収され歯と歯ぐきとの間の溝から膿が出ている状態を示しているものです。

歯周疾患の進行に糖尿病が関わるしくみ

歯周疾患の進行に糖尿病がどう関わっているか、以下の4つが考えられています。

  • 細小血管系の変化
    糖尿病が進行すると、末端の小さな血管の血液の通り道が細くなり、栄養の供給や組織の修復能が悪くなります。
  • 口の中の細菌の変化
    清掃不良な歯と歯ぐきとの間の溝には、多くの細菌がひしめいています。血糖値が高くなると、この溝の中に滲出する液のブドウ糖含有量も増えます。細菌にとって、ブドウ糖は非常に利用しやすい栄養源なので、細菌の活動は活発化し、その数もどんどん増えてきます。
  • 免疫力の変化
    糖尿病の進行により、からだの免疫に重要な好中球の機能が低下するといわれています。このため、細菌の感染に対する抵抗力が低下し、歯周病が重症化する傾向が助長されていきます。
  • コラーゲン代謝の変化
    コラーゲンは歯周組織を構成する主要な蛋白質なのですが、このコラーゲンの合成が障害されたり、コラーゲンの破壊が促進されたりします。コラーゲンの破壊は、歯周疾患の遷延に影響します。
    糖尿病をうまくコントロールし、歯周疾患の治療・管理を行うことで歯周疾患の重症化を抑えることは可能です。

歯周疾患の進行を止めるために

まず、かかりつけ医による糖尿病のコントロールが第一です。さらに、かかりつけ歯科医による計画的な歯周疾患の治療が必要です。歯周疾患の治療・管理は、歯科医院内での専門的な治療(プロフェッショナルケア)と患者さん自身で行う清掃管理(ホームケア)によって進められます。

歯垢そのものはやわらかく歯ブラシで除去することができますが、適切な方法で清掃しなければ磨き残しがでてきます。残された歯垢は、やがて石灰化して硬い「歯石」となります。歯石は、歯ブラシで取り除くことはできません。定期的な歯科医院での歯石の除去と歯科衛生士による個別の清掃指導を受けることが


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大切です。一般的な歯ブラシの他に、補助的清掃器具の使用も必要です(写真1~3)。
電動歯ブラシや、殺菌効果を期待した義歯洗浄剤、歯磨剤、洗口液の使用も効果的です(写真4)。
また、進行した歯周疾患の治療には歯石の除去だけでなく、計画的な外科的治療が必要になる場合もあります。治療が長期にわたることもありますが、御自身の生活環境にあった治療と管理方法をかかりつけ歯科医とよく相談して歯周疾患の進行をくい止めましょう。

文責
ことぶき歯科医院 齋藤 寿章 

図の引用
図1 BUTLER:Dental Home Care,MODERATE TO ADVANCED PERIODONTITIS.

参考とした文献
岡部 正、亀田秀次:糖尿病と歯周病.日本臨床,55(増刊):1000-1005,1997.

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