できますよ全館禁煙

「個人がタバコを吸っているかどうかを問題にはしません。医療や健康を対象にした仕事をしている病院という施設が様々な病気の原因であることが明らかなタバコを吸う場所として適切かどうかを考えて欲しいのです。」タバコ問題について衛生委員会に出席したときの私の発言です。本年になり日本医師会長も禁煙対策を積極的に推進するように指示を出されました。もはや医療機関や医師会での無煙化は避けて通れない状況になってしまいました。「あなたが喫煙者であるならタバコを吸うことを止めなさいとは言いません、しかしこの建物の中では吸わないで下さい。受動喫煙の害を正しく認識できれば建物の中ではタバコは吸えなくなるはずです。」と続けました。10年以上前に苦しい思いをしてタバコにお別れをした私ですが、こんな発言をするまでに祖父、祖母、父と身内のタバコ病の犠牲者を出しながらも平気な顔で吸っていた時代があります。

ニコチンという薬物中毒に陥っている人には突然、無理やり止めろといわれると「無茶なことを言うな!」ということになります。そうなのです。タバコを吸いたくて吸っているのではないからです。ニコチン中毒の方々はニコチンの血中濃度が低下すると意識しなくても火のついたタバコを口にくわえているのです。無意識の行動の前にその行動を予知して喫煙を回避するという行動は簡単にできるものではないことは私自身もよく知っています。(そのような作用を持つタバコを製造販売しているとタバコ会社が認めています。)

それでもあえて施設内を完全に禁煙にとお願いするのはやはり病院や保健施設のサービス内容とタバコの持つ毒性とに整合性を見出すことができないからです。病院の全館禁煙化は先進国だけでなく発展途上国でも常識化しています。日本が世界で一番遅れているという研究者もいるほどです。喫煙対策の一番遅れた日本以外の国では現在の日本の喫煙者が禁煙問題に対して発する様々な意見に対し喫煙者の自由な喫煙というものは認められないと結論が出てしまっています。

徐々に全館禁煙が実施される病院が増えてきました。できると確信してこの問題を成功させましょう。職員の採用でも喫煙者を採用しない方向の施設が現れ始めています。決して時期尚早ではありません。医師会の管理する施設内での喫煙を実現することが、「みなさんの健康をいつまでも守りつづけたい」という医師会のメッセージの具体的な行動ではないでしょうか?

タバコに甘い社会の代表が日本です。その中でも医療機関のタバコに対する意識はきわめて低いといわざるを得ません。インドや韓国などでは病院内の禁煙は当然のことで最近は話題にもならないようです。今年の4月2010年までに市民の喫煙を0%にしたいと兵庫県の伊丹市が「絶煙宣言」を出しました。個人の嗜好問題を行政が介入するのはけしからんなどとまたいつもの反対の意見が出たようです。世界中が取り組みが甘く極端に遅い日本のタバコ対策を見て笑いものになっていることは日本人のほとんどが知りません。

ここ10年ほどの間にタバコの吸えるところは少しばかり減りました。しかしまだまだ不十分です。タバコを吸う人は自分が迷惑をかけているという認識がありません。私もかつてはそうでした。しかし受動喫煙の実態や様々なデータを真剣に検討するととても喫煙者の自由を許せる状況ではないことがわかります。

喫煙者はニコチン中毒という薬物中毒患者という認識で薬物中毒者の治療というスタンスでなければ禁煙への取り組みは挫折します。私自身が平成元年まで1日30~40本の喫煙者であり、そこからやっと休煙者として人前でタバコを止めることを積極的に指導できるようになるまでに約10年かかりました。タバコは美味しいです。味を覚えたらそう簡単には止められません。

文責
松本医院  松本祐二

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